ひらまつ内科 国分寺市南町 リウマチ科・アレルギー科・内科・呼吸器内科
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患者様へ

エンブレルのメディア報道について

関節リウマチの治療薬エンブレルについて、死亡例に関する報道がありました。
エンブレルの発売(平成17年3月30日)後、適正使用を推進するため全例市販後調査(以下PMS)が義務づけられ、製薬会社ワイス社を通じエンブレルの安全性および有効性の調査がおこなわれ、副作用等について厚生労働省へ報告されています。

全例調査の中間成績では、副作用が発現した患者様の中で不幸にも亡くなられた患者様の割合は、一般的に関節リウマチ患者様が亡くなられる割合と変わりがありませんでした。
従来の抗リウマチ薬においてはPMSが実施されていないので、どの程度の頻度で重篤な副作用が出現しているか正確には不明ですが、致命的な副作用が一定頻度で出現します。
エンブレルに限らず、副作用の重症化を防ぐためには早期に発見し、適切な治療を行うことが大切です。
治療中に「おかしいな?」と思うことや、特に以下のような症状があらわれた場合は、次の診察日を待たず、当院または薬局にご連絡ください。

・ 風邪っぽい
・ 発疹がでた
・ 疲れやすく、だるさを感じる
・ 咳、息苦しさ、発熱がある
・ 口内炎がよくできるようになった

また、よほど重症にならないと自覚症状の現れない副作用もありますので必ず定期診察・定期検査を受けてください。

詳しいことにつきましては、遠慮なくご相談いただきますようお願い申し上げます。
なお、日本リウマチ学会の見解は下記のとおりです。

平成20年1月
                      リウマチ科・アレルギー科クリニック  ひらまつ内科

日本リウマチ学会会員の皆様へ

有限責任中間法人日本リウマチ学会理事長
小池隆夫

エンブレルによる死亡報道に関する日本リウマチ学会の見解

本年12月6日(木)の朝日新聞夕刊の1面に;リウマチ薬79人死亡「エンブレル」05年3月以降の見出しで、「2005年3月30日の発売以降本年の 11月末までに薬との因果関係が否定できないと製造元に判断された死亡患者が79人にのぼるとワイスが合計数をホームページで明らかにした。」と報道されました。
また15面には:死者数注意喚起せず 医師「なぜ早く知らせぬ」の見出しで、「類似薬より死亡例が多いのではないか。なぜ早く知らせなかったのか。薬は患者が家で自己注射できるのが特徴で、注意喚起が欠かせない。」「関節リウマチそのもので亡くなることは極めてまれで、副作用による死亡は徹底的に避けるべきだ。主治医を中心とする分析と周知が不足しており、徹底する必要がある」等の複数の医師からのコメントもあわせて掲載されておりました。
同様の報道は多くの地方紙にも翌日の朝刊で行われておりました。

一方、12月7日の読売新聞の朝刊には:リウマチ薬使用で死亡、16人が副作用の可能性の見出しで、「ワイス社には先月末までに、副作用の疑いがある 79人の死亡が報告された。このうち、60人の症例について独立行政法人医薬品医療機器総合機構が検討したところ、16人が副作用との因果関係を否定できなかった。15人は敗血症など感染症で、1人は間質性肺炎だった。」と報道されております。
また「厚生労働省安全対策課は、引き続き情報を集め、必要に応じて対応したい。」とのコメントも掲載されております。

日本リウマチ学会員の皆様は既にご承知のことと思いますが、エンブレルの発売には、全例市販後調査(以下PMS)が義務付けられております。厚生労働省からも日本リウマチ学会に対して、適正使用を推進するため企業が実施するPMSに対しての協力依頼があったことから、日本リウマチ学会内にPMS委員会(委員長;小池隆夫)を組織いたしました。このPMS委員会は、ワイス社が行うPMSの進捗状況の確認と助言ならびにワイス社のPMS評価に対して、リウマチ専門家としての医学的観点からの助言を行う委員会です。平成17年4月20日に第一回を開催し、これまでに計14回の会合を持ちました。

日本リウマチ学会PMS委員会とは別に、エンブレルの使用により死亡例を含む重篤な有害事象が医師から報告されたときには、ワイス社は適宜独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下PMDA)の安全部に報告し、PMDAが選任した専門委員により「エンブレルと死亡との因果関係の判定」が行われてきました。その結果はPMDAのホームページ上に随時掲載されております。すなわち、11月末日までの「本剤との因果関係が否定できないと主治医によって報告された死亡例79名」のうち、60例をPMDAの専門委員が検討して、「本剤の使用と因果関係がありと判断された数が16名である」と公式に報告されました(ただし、残りの19名については、まだ正式な報告はありません)。読売新聞の記事の内容はその点を重視したものであり、そのために朝日新聞を含む他の多くの新聞記事との間で数の違いが生じており、読者に少なからず混乱を招きました。

日本リウマチ学会PMS委員会は、本年3月27日にワイス社により集計されたエンブレル使用医師からの有害事象情報(7,091例;(観察期間24週(+4週)中の総死亡例33名、その中にエンブレルとの因果関係を否定できない 21名の死亡症例を含む)を確認いたしました。その後7,091例の中間報告書は4月27日に厚生労働省審査第一部会で審議され、エンブレルの全例登録は解除になりました。

これらのデータに基づきますと、日本におけるエンブレル投与患者の観察期間を考慮した粗死亡率は8.9/1,000人年となります。これは英国の生物学的製剤登録調査(BSRBR)の9.6/1,000人年、ドイツの生物学的製剤登録調査(RABBIT)の11.8/1,000人年とほぼ差がない数値です。

関節リウマチは生命予後に影響を及ぼす疾患で、性・年齢を考慮して一般集団と比較した標準化死亡率比(SMR=Standardized Mortality Ratio)は、欧米で2.18―3.08 (Wolfe, 1994)、2.252―2.42(Singer, 1998)、2.64(Sihvonen,
2004)、1.45―1.84(Goodson. 2005)、日本ではハザード比 1.60(95%CI:1.29-1.99)(Hakoda,2005)などの報告があります。なお、エンブレルPMS登録患者7,091例の時点で調査期間である24週以内に死亡した29例(因果関係なしを含む)を対象とした標準化死亡率比は1.3(95%信頼区間:0.9-1.9)とワイス社から報告されております。

このたびの新聞報道で、日本リウマチ学会の会員の皆様やエンブレルの投与を受けておられる患者様方は、多大な不安を抱かれたことと思います。また、現在までエンブレルの市販後調査総登録数は14,369名になりますが、全ての症例の観察期間が終了した時点でのエンブレルの投与を受けている患者の観察期間や性、年齢分布、転帰に関するより詳細な情報が得られますので、さらに正確な標準化死亡率などの疫学的数値が算出可能になるものと思われます。

薬剤に起因する重篤な副作用、なかでも死亡は本来あってはならないものですが、科学的な見地からは、現時点ではエンブレルの投与により、関節リウマチ患者の死亡数が明らかに増加しているとは結論づけられません。 このことをご理解いただき、日本リウマチ学会会員の皆様におかれましては、患者様方への適切な説明をお願い申し上げます。

今回の新聞報道に関する学会員の皆様のご意見をお寄せ下さい。
http://www.ryumachi-jp.com/ryumachi/form/form1.aspx

 


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